system:無軌道備忘録
ふっと浮かんだあの思い出、出来事、誰かのいった良い言葉を、消える前にあまねく記録するのです。無軌道な感じで。力まずに。

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夢の記述(レシ) あるいは 劇中劇の構造

<Ⅰ>
小学校のステージに設営された映写装置。スクリーンの中の女の子が5度目の失敗を犯す。観客の期待と憎悪の混じった視線。客席から虎がスクリーンの中へ飛び込んでゆく。登場人物の交代が行われるのだ。次の配役に選ばれたのは、俺。
「失敗しろ」
「早く俺に番を回せ」
見知った顔もいる会場からの悪罵を受けながら、俺は地下の映写室へ降りてゆく。全身真っ黒で手と足だけが2mくらいある生き物が映画館の扉に手をかけて待っていた。真っ黒の顔面はまん中に二重丸があるだけだ。そこから声が発せられる。
「ようこそ、世界のすべての残酷はすでに上映されています」
扉が半分だけ開かれる。と、中から黒い液体が染み出てくる。半分しか見えないスクリーンには、白と黒の変化する抽象画のようなものが映し出されていた。


<Ⅱ>
四季中学校で噂になっている怪談があるらしい。俺はそれを坊主同伴で調査しなければならない。坊主は先に乗り物で中学校に着いているらしいが俺は歩いて目的地に向かう。団地の裏の細い道を抜けると学校の敷地が見えてきた。突然垣根のむこうからワゴン車くらいの大きさのカブトムシがのそっと出てくる。羽を上げたら中から人が降りてきた。これはどうやらタクシーらしい。そのあと7,8mくらいの高さがある列車が走っていった。先頭には真っ赤なガチャピンの顔がついていて眠そうな目でこっちを見ていた。学校のプールへ上がりこむとそこには坊主は待っていて、柵をつかんで遊んでいる。ふと悪戯心を起こした俺は坊主にばれないように傍からそっと離れる。プールの角を曲がり、校舎の陰に隠れてそのままプールから遠ざかる。向こうでは坊主が俺がいないことに気づいたらしい。
「パパ? パパ! パパ!」
俺はまだ遠ざかる。
「パパ! パパ! パパ!」
まだ遠ざかる。
「パパ! パパ! パパ!」
そろそろ可哀想になってきた…ここで気付く。冬で水の張っていないプールに坊主が落ちたら怪我をしてしまうのでは?しまった、悪ふざけが過ぎた。俺はいそいで坊主の所へ行こうとするが、足が前へ進まない。夢の中に特有のあの水の中を漕ぐような感覚。
「パパ! パパ! パパ!」
気は焦るがやはり足は重く
「パパ! パパ! パパ!」
悔悟の気持ち、罪悪感
「パパ! パパ! パパ!」
ようやく校舎の角まで来た、ここを曲がればプールが…
…角を曲がったら、夏になっていた。水着の小学生たちがたくさん泳いでいる。坊主は?俺は愕然としながらプールサイドに上がってきた女の子に話しかける。
「あの…ここに1歳半くらいの子供が」
「子供?プールの怪談のこと?」
「怪談?」
「ずっと前、このプールでお父さんと一緒に遊んでいた子供がいたんだけど、どういうわけかお父さんが突然いなくなってしまったんだって。結局お父さんは二度と現れなくって、今もその子はこのプールでお父さんを待っているんだって。このプールで事故が頻繁に起こるのは、その子の仕業っていう怪談。」
血の気が引く。怪談の原因は、俺?いや、そもそも…いや、いや…俺は何があったかを女の子に話す。
「親失格ね。何考えてるんだか」
返す言葉もない。
「何突っ立ってるの?正座しなさいよ」
言われるままに正座する俺。女の子は俺を蹴りながら言う。
「ここで事故に遭った子供の親に対してどう責任取るワケ?」
蹴りながら
「あんたが生きてるのが全部悪いんじゃない!」
一人、二人と俺を取り囲む子供が増えていき、暴行もエスカレートしだす。その時
「パパ!」
坊主の声。 
ゴシャ 
見ると、プールが半壊して、渦巻きの中に子供が2,3人吸い込まれていた。


<Ⅲ>
春、俺は学校の宿舎に寝泊りしていた。坊主を探し出すためにだ。同じ部屋には俺の他に二人の中年男性が同じように住んでいた。今日もお互いにがんばろうと、外へ出る。宿舎の柱には「私刑地の門」という張り紙が貼ってあった。宿舎の出入り口の近くにはすぐ垣根があり、右手には外へ通じる裏口、左手には校舎がある。何気なく足元の花壇に目をやる…
「学校の」
振り返ると宿舎の中、校舎の角、教室の中から中学生たちが現れた。
「授業は」
一人や二人ではない。十人、二十人と灰色の学生服とセーラー服を着た子供たちが出てくる。
「実物の」
ぶつからずに通り抜けることは出来ないくらいの感覚にまで子供たちは増殖する。
「教育」
百人の少年少女たちは一斉にこれらの言葉を口にしている…俺の方を見ながら。
「実際にやってみましょう、相手も同じ人間なんだから。例えば」
近くの少年が突然俺の腹を殴る。まともにみぞおちを殴られ、俺はうめく。
「同様に痛みを感じる!」
百人の大爆笑と斉唱。女の子が俺の股間を蹴り上げるが、とっさに防ぐ。
「同様に痛みを感じる!」
危険を感じ、俺は垣根を乗り越えて逃げようと手を伸ばす。手が垣根の上を越えた瞬間
ゴギ 
既に外は子供たちで埋め尽くされていて、俺の左手に一斉に飛び掛ってきた。薬指と小指が変な方向に曲がっている。痛い、と考える前に宿舎の二階から男の断末魔が聞こえてきたが 
ゴチャ 
鈍器で叩いたような音と水音が混ざったオノマトペでその声は中断させられる。子供たちはだんだんと近づいてくるので俺は花壇の方へ追いやられた。咲いている花の中に混じって、竹串が一本埋まっているのを見て、俺はとっさにそれを抜いた。脅しくらいにはなるだろうか?そう思って顔を上げると、子供たちの手には俺と同じ竹串が握られている。ゆっくり、ゆっくり、子供たちは花壇の中へ踏み入ってくる。俺は近くの少年の脳天に、思いっきり竹串を突き刺す。
「同様に痛みを感じる!」
また同じ台詞と爆笑。俺は意を決して垣根を飛び越える…しかし同時に、百人の少年少女たちは一斉に飛び掛ってくる。
「うわああああああああああああガキは死ねえええええええええええええええええ!!」
「同同同同同同様様様様様様様様にににににに痛みをををををををををををををををを」
俺は手当たり次第に子供らの目に、鼻に、耳に、口に、のどに、頭蓋に、串を突き刺す。そして同様に目に、鼻に、耳に、口に、のどに、頭蓋に、串を突き刺される。鈍い痛みと熱さが全身に広がり、自分の体がミンチにされていくのがわかる。やがて、俺を殺し終えた子供たちはお互いに殺戮をはじめる。刺し、殴り、噛み…溶け合いグズグズになった子供たちの体から乳白色の靄が流れ出てきて、あたりにたち込めていき、そして俺は理解する。…―これは子宮の中の戦いなのだ。卵子へ辿り着くための精子たちの戦い、始原の生存競争。俺はそれに敗れたのだ―…乳白色の靄が濃くなっていき、やがて視界は完全な白となる。喧噪ももはや聞こえない。その人類以前の白の中を漂いながら、最後に俺はつぶやいた。
「失敗した」
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【2007/03/11 23:29】 | トラックバック(0) | コメント(0) |

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